知財コラム⑩

〜儲かるAIビジネスの影に知財リスクあり〜

 生成AI開発に著作物を不正に使われたとして、作家らが「Claude」を運営するアンソロピック社をカリフォルニア州の連邦地裁に訴え、アンソロピック社が15億ドル(約2200億円)を原告に支払う和解案に合意したもようです。

Anthropic社の主張:「Claude」の訓練のために著作物をコピーする行為は、新たな知識体系を創出するための「変容的利用」であり、フェアユースである。

→Google Books訴訟でGoogle側が書籍のスキャンを正当化したロジックと類似

原告側の主張(抜粋):Anthropic社が学習データを収集する過程で、海賊版コンテンツが集積する「シャドウ・ライブラリ」から、BitTorrentなどの技術を用いて数百万冊にのぼる書籍を意図的にダウンロードし、学習に利用した疑いがある

→「盗品」を使ってAIを訓練していたとなれば、もはやフェアユースの議論の前提が崩壊

裁判所:Anthropic社が海賊版サイトから書籍を不正に入手した事実を認定

→侵害が故意と認定された場合、裁判所は実際の損害額とは無関係に、1著作物あたり最大15万ドルの賠償を命じることができる

☆そうなると、1万冊の侵害認定だけでもう15億ドル。百万冊単位になるとこれの数百倍になってくるのだから、和解で決着できたのはむしろお得だったのだろうと思われる。しかし、Anthropic社は、これに先立って音楽出版社から同様内容で訴えられており、未だ係属中(以下訴訟情報)

原告 (Plaintiffs): Concord Music Group, Inc., Universal Music Corp., ABKCO Music, Inc. 他

被告 (Defendant): Anthropic PBC

裁判所 (Court): U.S. District Court for the Middle District of Tennessee (米国テネシー州中部地区連邦地方裁判所)

訴訟番号 (Case Number / Docket Number): 3:2023cv01092

提訴日 (Filed): 2023年10月18日

 ということで、Anthropic社は、今後も、一般人には全く馴染みがないくらいの巨額のお金を支払わなければならなそう…

 これで同社はダメージ受けるのでしょうか?それとも、こんなの痛くも痒くもないくらい「Claude」の有料プランは儲かっているのでしょうか?!

 とりあえず「儲かるAIビジネスの影に知財リスクあり」と言えそうです。

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