~特許庁で使える審査官端末について~
もうだいぶ前になってしまいますが、特許庁にて「無料」で使える審査官端末を少しいじってみましたので、簡単にレビューをしたいと思います。
まず、霞ケ関にある特許庁2階の公報閲覧室に向かいます。
ここは独立行政法人 工業所有権情報・研修館(特許庁の調査委託機関、そして天下り機関の1つ)の管轄・運営となっています。
閲覧室に入ると受付のお姉さんが対応してくれるので、それに従い、利用者登録の書類に記入し利用者証を発行してもらいます。
この日は平日だけに、というか平日しか開いていませんが…、利用者はまばらで自分を含めて3人くらいでした。新規の利用者は明らかに自分だけでした。なので、手続きもスムーズ、すぐに使い始めることができました。
どの端末を使うかを自ら指定して、使用開始です。
使用方法を教えてくれる当独立行政法人のヘルプの方が常駐していました。2人いたのですが、1人は、机に座ってひたすら何かをやっているぶっきらぼうでありながらも質問するとちゃんと回答してくれる年配の方、そして、もう1人はちっとも働かないで、立ちながらストレッチみたいなことをひたすらやっている年配の方。
そう、この機関に所属している方は、高度な理系の技術的知識が必要という触れ込みで、リタイアした元エンジニアや研究者、そして特許庁OBの受け皿となっているのです(ちなみに、給料は結構良く財源はもちろん公金です)。
なんでも、こういう恩恵に授かっている年配の方曰く、定年後~ボケるまでを待つ老人層に用意されている仕事は、日本には(ピンきりではありますが)たくさんあるそうです。
そういう一種の国による社会福祉が機能しているのなら、なぜ、年金だけで細々と暮らし、いつの間にか孤独死している老人が相当数いるのでしょうか?明らかにこれは、どう生きてきて何をしてきたかではなく、どこに所属してどんな肩書であったかだけで、特定の恩恵に授かれるとても不公平な社会福祉なのではないでしょうか。
少なくとも、雀の涙くらいしか毎月貰えず、公務員の着服の温床となっている年金は抜本的改革が必要と思います。…話がめちゃめちゃ逸れてしまいました。
さて、審査官端末(端末と言っても普通のWinPCからのソフト起動です)のI/Fですが、いわゆる先端の検索、概念検索やセマンティック検索、AIによる自動分類などは一切できないです。
基本的にできるのは、分類コードとキーワードの論理式による検索だけです。
最初に結論だけ言っておくと、使い勝手が悪く、ヒットする件数がなんだか少ないような気がしました。もしかしたら、使いこなせるようになれば、すごく便利な端末なのかもしれません。
検索をするメインの画面(クラスタ検索)のI/Fですが、画面の上から説明すると、まず、公報の種類を選択するチェックボックスなどがあります。これは通常の商用DBにも必ず見かけるので詳細は割愛します。要するに、日本の公報だけか、外国公報も含むのか、などの選択ができます(非特許というオプションもありました)。
次に、分類コードを入力するテキストボックスが続きます。「主テーマ」を入力するテキストボックスが1つ、「副テーマ」を入力するテキストボックスがいくつかあります。ただ、ここでは主/副「テーマ」となっているため、入力できる分類は日本の特許庁の独自分類である「Fターム」一択となっているのです!
いくら特許庁推しの分類とはいえ、Fタームだけ使えとは…これはいくらなんでも不便なのではと思ったのですが、よくよくヘルプを読んでみると、このあと説明するキーワードを入力するテキストボックスに他の分類コード(FIやIPC)を入力することができ、キーワードと共に論理式を組めることが分かりました。これは少し面倒ですね…しかも、「主テーマ」を設定すると、その後のキーワード等は、そのテーマ(Fターム)との掛け合わせ(AND)になるはずなので、例えば、似たような分類を広く取りたいので、FIとFタームをORしたい場合はどうするのか!? Fタームもキーワードを入力するテキストボックスに入力することができるのだろうか?と疑問が湧きましたが、この部分については確認しませんでした。
ちなみに、分類コードを入力し易くするような補助ツールはないのですが、J-PlatPatにあるようなPMGS(分類照会)を立ち上げることは可能です。
さて主/副テーマを入力したら、次は「入力・表示設定」という項目がありましたが、これについては、使い途が分からないので使用しませんでした。よって説明は割愛します。
次に、公知日ですが、これは技術が公知となった日、公報であれば公報発行日となるはずです。始期と終期を指定する2つボックスがありますが、入力は必須ではありません(何も入力しなくても検索は実行できます)。
次は「検索指定」です。これは以下の画像にあるように検索の対象を指定します。例えば、特許と実案にチェックを入れます。その横にあるフリーワード種別というのは、検索対象のテキストの種類かとも思ったのですが、正直、よくわかりません。検索対象は、確か、論理式を入力するときにアルファベット2文字のタグみたいのを入力することで、全文とかを指定できるはずなので、このフリーワード種別の選択で検索対象のテキスト範囲が指定される訳ではないようです。フリーワード種別…なんでしょうね。あんまり気にしなくてもいいように思います。このときはチェックできる2箇所どちらにもチェックしておきました。
その次には、論理式を入力するテキストボックスがあります。「一次検索」「FW二次検索」「全文二次検索」と3つのタブで構成されています。後ろの2つの検索タブは「一次検索」の検索結果に対して、さらに絞り込みを行うためのものなのか?それとも、違った観点からの別の検索を実施するためのタブなのだろうか??このように行政系のソフトはいつも見た目からユーザーフレンドリーでないのが特徴の1つです。
通常は、「一次検索」だけを使って検索結果を得ればよく、大抵はそれで足りるのではないかと思います。この時も「一次検索」のタブしか使いませんでした。
論理式の文法は、割とオーソドックスで、キーワードに+/*のような演算子をつけて組み合わせていきます。また、キーワードの後ろには、近傍の文字数を表す数字や、/(スラッシュ)アルファベット2文字のフォーマットで、検索する対象などを指定することができます(例えば、名称、要約、全文など)。なお、近傍は、テキストボックスの横にある「近傍検索」というオプションをクリックして立ち上げることで、簡単にキーワードとキーワード間の文字数を設定でき、OKをクリックするだけで、論理式がテキストボックスに反映されるので、論理式の手打ちより、こちらのほうが便利です。
論理式を入力して検索ボタンを押すと、検索結果が下に表示されます。
「スクリーニング」は、ヒットした文献の記載内容が隣のモニターに表示され、2ページ毎に閲覧できるのが便利ではありますが、文献が切れ目なくページ表示されていくので、一体どこで終わって、始まるのか、たまに分からなくなくことがあります。
「文献一覧」は、その名の通り、ヒットした文献の一覧を必要最低限の情報により表示します。
その他にも機能はありますが、割愛します。
使ってみての感想は、総じて、使いにくい、ヒット件数が少なめという印象です。使いにくいというのは、単に慣れていないというのもありますが、行政のソフトだけに一度納入されると、その後のアップデートがほとんどなく、UIや機能が改良されないという理由からです。また、検索結果は、デジタルデータで持ち出すことはできず。印刷しかできません。よって、本格的な調査を実施して報告書に落とし込むなどのお仕事には不向きです。
しかし、民間の商用特許データベースを契約すると安くはないお値段となってしまいますので、こういった審査の現場で使うソフトを無料で利用できるのは、東京近郊の方に限定になってしまいますが、非常に有益な行政サービスであると思いました。
惜しむべきは、あまり利用者がおらず、閑散としていることです。
あまり利用者がいないためか、先日、2回目に訪れたとき(2022/7/1)には、以前は広めだった部屋が狭めの部屋に移転になっており、かつ、利用者がゼロでした。なのに、受付の方が2人、研修館からの出向のヘルプの方が3人いらっしゃったので、少しリソースの無駄使いかなという印象でした…。
<追記>
そういえば、この端末で各国でのみ出願されている公報を日本語または英語インプットで検索することができるのかは、不明でした。できるような気もしましたが、できないような気もする端末でした。もしかすると、それについては別の専用端末(または別のDB)があるのかもしれません。