知財コラム②

~新庄剛志氏の肩書「BIG BOSS(ビッグボス)」について~

今回は、北海道日本ハムファイターズの監督に就任した新庄剛志氏の肩書(または別称)「BIG BOSS(ビッグボス)」についてです。なぜ、氏がこの肩書で呼んでくれと人に言っているかは置いておいて、今回はこの「BIG BOSS」が商標登録されているか否かを調べてみました。

J-platpatで調べたところ、4件の文字商標と1件の図形商標がありました。図形商標は、おそらく問題にならない感じのものでしたので、以下、4件の文字商標を表に示しました。

出願人商標(検索用)指定商品または役務
サントリー
ホールディングス
株式会社
BIG BOSSコーヒー及びココア,コーヒー豆,茶
カモ井加工紙株式会社BIG BOSS電気絶縁材料,塗装用マスキングテープ,マスキングフィルム付粘着テープ
KPE株式会社BIG BOSS
ビッグボス
遊戯用器具,スロットマシン,ぱちんこ器具及びその部品
梶原 源太BIG BOSS被服,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,
履物,仮装用衣服,運動用特殊靴,運動用特殊衣服

さて、まず登録のステータスですが、1〜3番目までは商標が登録されており、権利としての効力を有しています。最後の商標だけは、ごく最近(2021年 11月 8日)出願されたようで、「審査待ち」のステータスとなっています。侵害の場面について考えると、この最後の商標出願が登録されると新庄氏やファイターズにとって少し厄介なことになりそうです。

というのも、商標だけ見ると、商標に詳しくない方は、全て厄介なことになりそうに思うのですが、仮に、第三者がこれらの登録商標「BIG BOSS」を、指定している商品または役務以外について使用したとしても侵害とはなりません。これを理解した上で1〜3番目の商標の指定商品を見ると、コーヒーや粘着テープ、スロットマシンなどなど、新庄氏や球団がグッズとして扱わなそうなモノばかりです。一方、最後の商標の指定商品を見てみると、被服、ベルト、履物などなどグッズとして販売しそうなモノが目立ちます。すると、仮に、新庄氏や球団がユニフォームに「BIG BOSS」と付して販売を開始すると、厄介なことが起こり得ます。

「厄介なこと」というのは、商標権を侵害している旨の通知から始まり、ライセンス(商標の使用料)の要求、または商標権の売買契約の交渉などに発展し、それらの話し合いが纏まらなければ、損害賠償請求といった裁判沙汰になってしまう、といったところです。

ただ、当商標は、まだ出願段階で審査も始まっていませんから、まだ何らのアクションも起こせません。また、出願日(11月8日)が新庄氏の監督就任会見(11月4日)の後であることから、BIG BOSS(ビッグボス)が新庄氏の肩書として周知になった後から出願したものと思われても致し方なく、審査の過程で、「自らが使用する意思がない商標」である等と判断され、登録に至らないことが十分に考えられます。

仮に、当商標が登録されたとしても、例えば、ユニフォームには球団名やロゴが付されており、通常はそちらが商標と認識され、背番号の上にBIG BOSS(ビッグボス)と付されても、それは選手名を表示しているとしか通常は捉えられないと考えます。しかし、BIG BOSS(ビッグボス)だけがグッズに付される場合には、商標として認識され問題となる可能性が生じてくるでしょう。

ところで、出願人である「梶原 源太」というお名前をググってみると、平安時代末期から鎌倉時代初期の武将である「梶原 景季」(かじわらかげすえ)がまずヒットします。梶原 景季は、「梶原源太景季」(かじわらげんだかげすえ)とも呼ばれ、源頼朝に仕えた梶原景時の長男であったようです。どうやら、「梶原 源太」というお名前は、この武将の名前の一部を採ったものと思われ、本名かどうかは少し疑わしい感じがします。しかも、公報の出願人の情報の下には、代理人の氏名が記載されますが、この商標出願には6名もの代理人の氏名が記載されています。商標出願で6名も代理人をつけている出願人はあまり見たことがないので、良からぬことを企んでいるような匂いがプンプンしました(あくまで個人の感想ですが…)。

なお、出願人の氏名が本名ではなかったとしても、それを理由として出願が拒絶されることはないようです。

【追記】
実は日本ハムファイターズは、本拠地を移転する予定で、新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」を建設中なのですが、これについての商標を調べてみると、ちゃんと登録されていました(登録6472361)。かなりの数の商品および役務が指定されており、権利者は「株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメント」となっています。このようにしっかりと知財管理がされている会社ですから、どうやら、ファイターズは「BIG BOSS(ビッグボス)」関連の知財についてはノータッチのようです。つまり、「BIG BOSS(ビッグボス)」関連の知財について注意を払わなければならないのは、専ら新庄氏だけということになりそうです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です